生まれ変わっても 君を呼ぶから ぼくらは、名前もつけて貰えないまま、段ボールにつめられた。 助けて欲しくても、呼ぶ名前を知らない。 誰を呼べばいいんだろう。何にすがればいいのだろう。 ただ、生きていたいだけなのに。 ただ、生まれてきただけなのに。 ぼくたちの何が、罪だったのだろう? --------------------------------------- 僕らの遥か上方で、外に繋がる蓋が閉じられた。 僕たち兄弟は寄り添って、閉ざされる未来をただ見ていた。抗うことは許されない。 視界が真っ暗になる。とたんに心細くなった僕が、出して貰おうと鳴くと、外から壁を殴られた。 パニックになって壁を引っ掻くと、ガタガタと揺らされた。 顔も名前も知らない飼い主さん…飼い主だった人は、僕らに名前すらつけてくれない。 にゃあにゃあと僕がわめくと、彼は暗い声で僕を脅した。 「金にならない雄猫なんて、今すぐ殺してもいいんだぞ」と。 それは本当につめたい声だった。 僕らのことをなんとも思っていない声だった。憎しみすらもない、無関心の声。 『…おとなしくしなよ。』 名前も知らない兄弟が、諦めたみたいに呟く。 僕らは寄り添って、寒さに震えていた。 兄弟の白いふわふわの尻尾に顔を埋めると、兄弟も僕のお腹に顔を擦り寄せてきた。 もはや僕らに選択の余地は残されていない。ただ身を任せるしかないのだ。 静かになったのを確認したんだろう。 空気の通りがなくなって、少し、息苦しい…。 抵抗しようとする僕の手を、兄弟が止めた。 その目はやっぱり暗くて、僕は涙をこぼすのさえはばかられるような気がした。 諦めるしかないのかも。 もう、委ねるしか… …そして僕らは、水音と共に川に投げ込まれた。 NEXT |